競馬調教師には日本中央競馬会(JRA)の調教師と地方競馬(NAR)の調教師と2パターンあります。それぞれの調教師になるための手段や特徴にも違いがありますので、今回はJRA競馬調教師について紹介させて頂きます。
JRA競馬調教師とは
JRA(日本中央競馬会)は中央競馬を主催する団体です。全国各地にある10ヵ所の競馬場(函館、札幌、福島、新潟、中山、東京、中京、京都、阪神、小倉)で開催されるレースは、すべてJRAが運営しています。
この中央競馬場でのレースに出場する競走馬を調教しているのがJRA競馬調教師です。
中央競馬は地方競馬と比べ賞金も高く、ビックレースになると1着賞金が1億円を超える場合もあります。調教師はその賞金の一部を収入源としているので、JRA調教師は比較的に収入も大きくなります。
↓調教師の仕事内容や向いている性格などについてはこちら


JRA競馬調教師になるまでの流れ
JRAの調教師になるにはJRAの試験に合格しなければなりません。しかし、その試験にはいくつかの受験資格があり、試験自体も超難解で合格率は10%以下となっています。
正直いうと騎手や厩務員としての経験がなければ合格は難しく、まずはJRA厩務員、若しくは騎手になるために、JRA競馬学校を卒業する必要があります。
また、JRA競馬学校に入学するには乗馬経験などの応募資格があり、試験も難易度が高いので、入学するために専門学校に入学する人もいるぐらいです。
その他にも厩舎従業員として働き、調教師から推薦してもらい推薦枠で受験する道もあります。
JRA競馬調教師になるまでの流れを分かりやすく図にしてみると、


簡単に言うとこんな感じです。
JRA競馬学校を受験する人の中には牧場や馬が身近にある環境で育ち、幼少期から乗馬や馬の育成経験を積んでいるようなエリート達もいます。
また、調教師の受験資格も28歳以上となっているので、直ぐになれるわけではありません。
そう考えると一般から調教師の世界に足を踏み入れるのは、かなり険しい道になり、上を目指せば目指すほど篩に掛けられていく事になるでしょう。
JRA競馬学校に入学しよう


JRA競馬学校には乗馬経験や体重制限、健康状態などの様々な応募資格があり、試験も難解なので、一般からの入学は難易度が高いです。
しかし、そんな方のために競馬学校に入学するための専門学校があるので紹介します。
また、JRA競馬学校には騎手課程と厩務員課程があります。どの課程を選ぶかで、募集人員や応募資格に違いがありますので、そちらも確認しておこう。
JRA競馬学校の受験勉強に適した専門学校一覧
経験と知識を十分に蓄えることができるのは、やはり専門学校に入学することが一番です。一部ですが施設をまとめましたので参考にしてください。
アニマル・ベジテイション・カレッジ
【学校紹介】
騎手、厩務員、乗馬インストラクター養成の各コースで、それぞれの夢の実現をサポートしてくれる。その他のコースとしては、短期間集中型の専攻科、小中学生や社会人が働きながら学べる選択科など多彩なコースを設置し、いつからでも学びをスタートできます。
また、ホースマンとしての専門知識や技術の習得に加え、人間力の養成を重視したカリキュラムを展開しています。
また、希望をすれば一般の高等学校卒業資格も取得できるサポートもあるので安心です。
東関東馬事高等学院
【学校紹介】
東関東馬事高等学院では全寮制で人を育て、社会人として生きる力を身に付けることができる学校です。
学科は騎手受験特別コース、競走馬の育成コース、高校乗馬活躍コースの3つに分かれます。騎手を目指す人、厩務員や牧場職員を目指す人、馬術選手を目指す人、それぞれの目標に見合った学習スタイルが見つかります。
インターアクションホースマンスクール
【学校紹介】
インターアクションホースマンスクールは、騎手・厩務員・牧場・乗馬クラブへの就職を目指すための学校、高校です。緑に囲まれた、競馬の牧場「ナリタファーム」内に完備された学校施設、学生寮という環境の中、経験豊富な講師陣、特別講師の現役JRA騎手、調教師、元騎手から、技術と知識を学ぶことができます。「高校課程」は、高校卒業資格を修得でき「2年課程」「1年課程」は、原則として高卒者を対象とし、5名以下の少人数制で、中身の濃い充実した授業を行うことで、騎手、厩務員、乗馬インストラクターなどのプロのホースマンを目指します。
国際馬事学校
【学校紹介】
国際馬事学校はJRA美穂トレーニングセンターが近くにある、茨城県稲敷市にある馬の学習をするには最高な学校です。学校名の通り、日本だけではなく、国際的にも通用する優秀な人材育成を目的に設立された学校です。
学習コースは、騎手養成コース、厩務員養成コース、インストラクター養成コース、牧場職員養成コースの4つに分かれますので、それぞれの興味や目標にあった学習スタイルを選択することができます。
JRA競馬学校【騎手課程の募集要項】


募集人数
- 10名程度
応募資格
年齢 | 競馬学校入学時に中学校卒業以上の学歴を有する者、又はこれと同等以上の学力を有すると認められる者で、令和3年4月1日時点の年齢が15歳以上20歳未満の者 |
体重 | 年齢区分毎に定められた体重以下の者平成15年3月31日以前に出生した者は48.0キログラム平成15年4月1日から平成16年3月31日の間に出生した者は47.0キログラム平成16年4月1日から平成17年3月31日の間に出生した者は46.0キログラム平成17年4月1日以降に出生した者は45.0キログラム |
視力 | 裸眼で左右ともに0.8以上の者(眼鏡、コンタクトレンズの使用は不可) |
色別力・聴力・健康状態 | 騎手として業務を行うのに支障がない者 |
その他 | 精神の機能の障害により馬の調教又は騎乗を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者並びに破産者で復権を得ない者禁錮以上の刑に処せられた者競馬法、日本中央競馬会法、自転車競技法、小型自動車競走法又はモーターボート競走法の規定に違反して罰金の刑に処せられた者競馬法施行令第10条第1項第4号の規定により本会、都道府県又は指定市町村が行う競馬に関与することを禁止され、又は停止されている者集団的に、又は常習的に暴力的不法行為その他の罪に当たる違法な行為で暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律施行規則第1条各号に掲げるものを行うおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者 |
競馬学校の試験要項
受験料
- 受験料はかかりません
一次試験
試験は競馬学校(千葉県)、栗東トレーニング・センター(滋賀県)、札幌競馬場(北海道)、小倉競馬場(福岡県)で行われます。
- 身体検査
- 運動機能検査
- 学科試験(国語、社会)
- 本人面接
- 『スポーツ特別入試制度』利用者は、第1次試験の運動機能検査が免除となります。
- 第1次試験通過者は、競馬学校で合宿形式の第二次試験を受験していただきます。
二次試験
- 身体検査
- 騎乗実技
- 厩舎作業実技
- 個別面接など
二次試験は合宿形式で行われ、合格者を篩に掛けていきます。二次試験でも身体検査があるので、体調管理と体重の管理には気をつけましょう。
JRA競馬学校【厩務員課程の募集要項】


募集人数
- 10月生、1月生それぞれ15名程度
- 10月生、1月生の最終的な振り分けは競馬学校で決定いたします。
応募資格
学力 | 競馬学校入学時に中学校卒業以上の学歴を有する者、又はこれと同等以上の学力を有すると認められる者 |
健康状態 | 厩舎従業員として業務を行うのに支障がない者 |
騎乗経験 | 競走馬・育成馬・乗馬の騎乗経験が1年以上であって、単独騎乗による3種の歩法(常速、速歩、駈歩)ができる者 |
その他 | 以下のアからオのいずれにも該当しない者破産者で復権を得ない者禁錮以上の刑に処せられた者競馬法、日本中央競馬会法、自転車競技法、小型自動車競走法又はモーターボート競走法の規定に違反して罰金の刑に処せられた者法令により競馬に関与することを禁止又は停止されている者集団的に、又は常習的に暴力的不法行為その他の罪に当たる違法な行為で暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律施行規則第1条各号に掲げるものを行うおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者 |
JRA競馬学校(厩務員課程)の試験要項
受験料
- 2019年周期募集の受験料は1900円
一次試験
一次試験は千葉県の競馬学校、滋賀県の栗東トレーニングセンター、北海道の新ひだか町公民館・コミュニティセンターの3会場で行われます。
- 身体検査(体重測定含む)
- 運動機能検査
- 学科試験〔一般教養(漢字読み書き、社会)、競馬一般〕
- 学科試験の過去問は過去5年分を競馬学校から取り寄せることができます。
二次試験
- 身体検査(体重測定)
- 騎乗適性検査(部班運動)
- 本人面接(「騎乗適性検査」で成績上位であった受験者のみ)
- 「騎乗適性検査」では、スリーポイントおよびツーポイントが行われますが、鞍は調教鞍(調教の際に使用される鞍)が使用されます。
JRA厩務員、騎手として働こう


ここではJRA厩務員、騎手になるための条件について紹介させて頂きます。
JRA厩務員になるには?
JRA厩務員として働くには、JRA競馬学校を卒業する必要があり、日本調教師会が実施する採用試験を受ける必要があります。そして、採用試験に合格すると、「厩舎の経営者、つまり調教師個人と雇用契約を結ぶ」という制度になっています。
その他に条件は特にありませんが、JRA競馬学校を卒業したからといって同時に雇用関係が生じるわけではありません。
厩務員に空きがない場合は、一時待機となることもあります。欠員を待つあいだに、臨時厩務員として雇用される場合もある模様。
とにかくJRA競馬学校という高い壁をまずは越えることが重要なポイントとなることは間違いないでしょう。
JRA騎手になるには?
JRA騎手になるためにはJRA競馬学校騎手課程を卒業することが必須です。競馬学校に入学し、全課程を終えるとJRAによる騎手免許試験を受けることになります。試験は学校を終了する前に受験することが多いです。
- 筆記試験
- 口頭面接による学力テスト
- 騎乗技術
- 身体検査
- 面接
競馬学校で学んだ全てのことが、この時に試されます。
その試験に合格すると競馬学校の課程は修了となります。その後は美浦、栗東いずれかの厩舎に配属されて、騎手としての本格的な人生がスタートします。
JRA競馬調教師免許取得の概要


JRA厩務員、騎手として働き経験を積むことで、やっと調教師の道が拓けてきます。
しかし、ここからが更に険しい道のりで調教師になるための、厳しい受験・免許取得の資格と免許試験に合格しなければなりません。
ここでは、調教師免許の受験資格及び免許取得資格の紹介と試験の内容について紹介させて頂きます。
受験資格及び免許取得の資格
【調教師試験の受験資格】
下記の条件を満たしていなければ試験を受けることができません。
- 受験日に調教師の免許試験にあっては28歳以上の者のみ受験することが可能です。



資格は年齢制限だけで、以外と受験資格はハードルは高くないようです
【調教師免許取得の資格要項】
以下の要項に該当する人は免許を取得することができません。
- 精神の機能の障害により馬の調教又は騎乗を適性に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者並びに破産者で復権を得ない者
- 禁錮以上の刑に処せられた者
- 競馬法(昭和23年法律第158号)、日本中央競馬会法(昭和29年法律第205号)、自転車競技法(昭和23年法律第209号)、小型自動車競走法(昭和25年法律第208号)又はモーターボート競走法(昭和26年法律第242号)の規定に違反して罰金の刑に処せられた者
- 競馬法施行令(昭和23年政令第242号)の規定により日本中央競馬会(以下「本会」という。)、都道府県又は指定市町村(地方自治法(昭和22年法律第67号)第284条第1項に規定する一部事務組合又は広域連合であって都道府県と指定市町村とが組織するもの及び指定市町村が組織するものを含む。)が行う競馬に関与することを禁止され、又は停止されている者
- 集団的に、又は常習的に暴力的不法行為その他の罪に当たる違法な行為で暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律施行規則(平成3年国家公安委員会規則第4号)第1条各号に掲げるものを行うおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者
- 本会の経営委員会の委員
- 本会の役員及び職員
- 本会の馬主登録を受けている者
- 日本中央競馬会競馬施行規程第52条第3号(第2号又は第3号に係る部分に限る。)又は第53条第2号若しくは第3号に該当することにより、第52条又は第53条の規定により免許を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者
- 前各号に定めるもののほか、競馬の公正かつ安全な実施の確保に支障を生ずるおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者
参照:http://www.jra.go.jp/news/201908/pdf/080701.pdf
受験に必要な申請書類
- 必要事項を記入した本会所定の書類一式
- 申請書(写真貼付のこと。)
- 履歴書
- 身体検査書(※日本国内の医療機関で受診すること。)
- 外国の競馬統括機関の免許を受けている調教師については宣誓書
- 住民票記載事項証明書
(申請者が本邦外居住者である場合には、旅券の写し。)
- 写真2枚(申請書類提出締切日前3カ月以内に撮影した縦3cm×横2.4cmの写真で端正な服装、無帽で正面から上半身を写したもの。また、写真の裏面には撮影年月日及び氏名を記入すること。なお、そのうち1枚は上記1イの申請書に貼付のこと。)
- 外国の競馬統括機関の免許を受けている調教師については免許証の写し
- (注1)2の証明書は、申請書類提出締切日前3カ月以内に交付されたものに限る。
- (注2)申請書類提出後、やむを得ない理由により試験場の変更を希望する場合は、本会所定の「試験場変更願」を審判部免許課あてに提出すること。
- (注3)外国の競馬統括機関の免許を受けている調教師は、当該年度を含む直近3シーズンの成績証明書(競馬統括機関等が発行するもの。ただし、日本語又は英語により記載したものに限る。)を添付すること。
参照:http://www.jra.go.jp/news/201908/pdf/080701.pdf
調教師免許試験の内容
試験は一次試験・二次試験とあり、一次試験を合格することで二次試験を受けることができます。
- 競馬関係法規に関する専門的知識及び労働関係基本法規に関する一般的知識(100点)
- 調教に関する専門的知識(100点)
- 馬学、衛生学、運動生理学、装蹄、飼養管理及び競馬に関する専門的知識(100点)
- 日本中央競馬会競馬施行規程第45条に規定する委員会が実績が優秀であると認めた外国の調教師に対する試験は、学力に関する筆記試験 を日本語で行います。試験内容は競馬関係法規に関する専門的知識及び労働関係基本法規に関する一般的知識(100点)
- 身体検査については、身体検査書の提出をもってこれに代える。
↓一次試験合格者のみ二次試験へ↓
- 競馬関係法規、厩舎の経営及び管理に関する専門的知識並びに一般常識(200点)
- 衛生学、運動生理学、装蹄及び飼養管理に関する専門的知識(100点)
- 馬学及び競馬に関する専門的知識(100点)
- 調教に関する専門的知識(100点)
- 所定の実績のある外国の調教師に対する試験は、学力及び技術に関する口頭試験を日本語で行います。
- 人物考査については、調教師としての業務を遂行するに当たり人格及び識見の面で特に支障がないか。また、精神の機能の障害により馬の調教を適性に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができるかを提出資料や面接などで試験します。
免許交付の際には免許手数料として3000円を納付する必要があるのでお忘れなく。
調教師免許交付後の動き
調教師免許が交付されると、ほとんどの人は先輩の調教師の元で「技術調教師」として1年間程働き、厩舎が空くのを待つことになります。稀に免許交付後、すぐに開業となる人もいるようです。
技術調教師として働いている間に、調教師としての経験や人脈作りに励み、厩舎が開けば晴れて開業となるわけです。
まとめ
ここまで来れるのは、本当に一握りの人達だけでしょう。
これだけ読むと、なんだか愕然としてしまう方も少なくはないと思います。
しかし、「調教師になりたい!」「夢を掴みたい!」という気持ちがあるのなら、その気持ちを忘れることなく、大きな夢と希望を胸に、失敗しても何度も挑戦する諦めない根性でたくさんの方が挑戦しくれることを願っています。
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