競馬と聞いて、皆さんが初めに思い浮かぶ職業は、馬を操り競馬場を走り抜ける騎手の姿ではないかと思います。それだけに騎手に憧れて競馬の世界に飛び込んでくる人も多いでしょう。
この記事を見に来てくれた人も騎手に何かしらの関心を持ち、ここに辿りついたんじゃないかと思います。
そんな人のために今回は徹底的にNAR(地方競馬)の騎手になるまでの道のりを解説していきます。



騎手になるためには何から始めればいいの?
スキルはどこで学べばいいの?
と悩んでいる人の参考になればと思います。
NAR(地方競馬)の騎手とは
NARとは正確には「地方競馬全国協会」の略です。
この団体は各都道府県や市町村が主催で開催される、競馬場の運営を全国的な連携を図るために存在します。
そして、NARが連携を図る各地方の競馬場で開催されるレースに出場する騎手がNARの騎手というわけです。
↓5分でわかるNAR騎手についての記事はこちら


NAR(地方競馬)騎手になるまでの流れ


NAR騎手になるにはNARの騎手免許を取得する必要があります。
その騎手免許を取得をするには地方競馬教養センター(騎手課程)という教育施設で学ぶ場合と何らかの経験や勉強をして直で騎手免許試験に挑む場合と主に2パターンあります。
この方法でなければいけないという事はありませんが、免許試験に向けてしっかりとした準備ができるのは、やはり地方競馬教養センターに入所する事が一番だと思います。
何故なら教育期間中に実施される実技の試験が免許試験扱いになりますので試験当日は実技が免除されたり、全寮制ということもあり寮生活を通して騎手にとって大切な体重の自己管理や強い精神力なども身につける事ができ、騎手としての将来が確かなものになるからです。
ただし教養センターへ入学するための試験は難関で、騎手課程2年間の学費も高額です。
一方で地方競馬の場合、求人さえあれば採用試験や資格なしで誰でも厩務員として就職する事ができるので、厩務員をしながら実技や知識を身に付けて免許試験に挑むことも可能です。
その他にも専門学校で学び、免許試験や地方競馬教養センターを受験する人もいます。
とにかく、免許取得にこれといった道はなく人それぞれ自分に合う進路で騎手を目指します。
騎手になるための知識と技術を学ぶ方法


生まれながらにして競馬関係者や馬が身近にいる環境で育ってきた人は幼い頃から騎乗に関する技術や知識を身につける事ができますが、そんな人は極一握りです。
反対にそうでない人が競走馬についての技術と知識を学ぶ事ができる場所は上記でも少し紹介しましたがいくつかあります。
【専門学校】で学ぶ方法


専門学校では地方競馬教養センター受験に向けた教育を受ける事ができますし、専門学校を卒業して実力があれば直で免許試験に挑むことも可能です。
専門学校のメリットは学校生活や寮生活で切磋琢磨しあえる仲間ができたり、騎手以外の業務でも役に立つ知識や技術を学ぶ事ができ、受験以外でも役に立つ事が多く学ぶ事ができます。専門学校の中には高校卒業資格も取得できるコースを用意してくれている学校もあるので、中卒で専門学校に行こうと思っている人にもオススメです。
デメリットは費用が高額なことや時間的な縛りがあることで、費用を抑えたい人や自分のペースで学びたい人には向いていないです。
専門学校のいくつかを下記で紹介させて頂きます。
競馬学校受験の対策ができるオススメの専門学校4選
アニマル・ベジテイション・カレッジ
【学校紹介】
騎手、厩務員、乗馬インストラクター養成の各コースで、それぞれの夢の実現をサポートしてくれる。その他のコースとしては、短期間集中型の専攻科、小中学生や社会人が働きながら学べる選択科など多彩なコースを設置し、いつからでも学びをスタートできます。
また、ホースマンとしての専門知識や技術の習得に加え、人間力の養成を重視したカリキュラムを展開しています。
また、希望をすれば一般の高等学校卒業資格も取得できるサポートもあるので安心です。
東関東馬事高等学院
【学校紹介】
東関東馬事高等学院では全寮制で人を育て、社会人として生きる力を身に付けることができる学校です。
学科は騎手受験特別コース、競走馬の育成コース、高校乗馬活躍コースの3つに分かれます。騎手を目指す人、厩務員や牧場職員を目指す人、馬術選手を目指す人、それぞれの目標に見合った学習スタイルが見つかります。
インターアクションホースマンスクール
【学校紹介】
インターアクションホースマンスクールは、騎手・厩務員・牧場・乗馬クラブへの就職を目指すための学校、高校です。緑に囲まれた、競馬の牧場「ナリタファーム」内に完備された学校施設、学生寮という環境の中、経験豊富な講師陣、特別講師の現役JRA騎手、調教師、元騎手から、技術と知識を学ぶことができます。「高校課程」は、高校卒業資格を修得でき「2年課程」「1年課程」は、原則として高卒者を対象とし、5名以下の少人数制で、中身の濃い充実した授業を行うことで、騎手、厩務員、乗馬インストラクターなどのプロのホースマンを目指します。
国際馬事学校
【学校紹介】
国際馬事学校はJRA美穂トレーニングセンターが近くにある、茨城県稲敷市にある馬の学習をするには最高な学校です。学校名の通り、日本だけではなく、国際的にも通用する優秀な人材育成を目的に設立された学校です。
学習コースは、騎手養成コース、厩務員養成コース、インストラクター養成コース、牧場職員養成コースの4つに分かれますので、それぞれの興味や目標にあった学習スタイルを選択することができます。国際馬事学校の詳細はこちら
【厩務員】として働きながら学ぶ方法


NAR(地方競馬)の厩務員になるにはJRAの様な採用試験や厳しい条件がありませんので、求人さえあればどんな人でも就職しやすくなっています。
そして、就職する事ができればその厩舎で働きながら騎手に関する知識や技術を学びます。厩務員として働きながら学ぶメリットは、働きながら学ぶので学費などの費用を抑える事ができることや、現場で学ぶので臨場感ある雰囲気を味わう事ができることです。
デメリットはあくまでも働く事が最優先である事です。専門学校の様に受験対策をバッチリにする事は難しいでしょう。
また地方競馬教養センター(騎手課程)の受験資格は年齢20歳以下ですので就職してからとなると間に合わない場合もあり、免許試験なら16歳以上なら制限なく受験できるので教養センターに行かず直で免許試験となる場合もあります。
地方競馬教養センターを受験しよう


地方競馬教養センターは競馬界が求める高度な騎乗技術と知識を兼ね備えた騎手を養成する施設です。ここを出なければ騎手免許は取得できないことないですが、騎手になるなら教養センターは出ておくべきです。
ただ誰でも簡単に入所できる訳ではありません。そのハードルはなかなかの高さで厳しい受験資格と試験をクリアしなければなりません。
今回は第93回騎手候補生募集要項を参考に紹介していきます。
募集人数
- 15名以内
応募資格
- 20歳以下であること
体重
- 15歳は44㎏以下
- 16歳は45㎏以下
- 17歳〜20歳は46㎏以下
※体重制限は年齢によって違いがあり、決められた数値以下でなければいけない。
視力
- 両眼とも裸眼(メガネ、コンタクトレンズ等を用いない)で 0.6 以上であること。
色別力・聴力・健康状態
- 騎手としての業務を行うのに支障がない者
- 問われない
※以下のどれにも該当しない者
- 平成17年度騎手課程募集要項
- 成年被後見人及び被保佐人又は破産者で復権を得ない者
- 禁錮以上の刑に処せられた者 ウ 競馬法、日本中央競馬会法、自転車競技法、小型自動車競走法又はモーターボート競走法の規定に違反して罰金の刑に処せられた者
応募手続き
受験を応募するには決められた申請書類を受付期間内に地方競馬教養センターに直送するか、駐在員を経由して同センターに提出してください。
受付期間は年によって異なる場合もあるので最新情報をお確かめ下さい。
- 受験申請書
- 履歴書
- 住民票記載事項証明書
- (世帯全員のもの。提出日3ヶ月前以内に作成されたもの。)
- 念書
- 親権者又は後見人の同意書
- 最終学校の学業成績証明書
- (封をしたものに限る。ただし、過去に受験した者はどう証明書を提出しているので再度提出は必要ありません。)
- 健康診断書
- (提出日の3ヶ月前以内に作成された者)
- 写真 3 枚
- (提出日前 3 か月以内に撮影したもので、縦正面上半身無帽、縦 36mm ×横 24mm の大きさとする。裏面に氏名を記載すること。)
- 郵便切手 80 円分
試験要項
試験の期間と場所
- 地方競馬教養センターにて1泊2日で行います。
※受験時の宿泊所及び食事(4 回)は、地方競馬教養センターで用意します。
試験内容
- 体重の測定並びに視力、色別力、聴力及び健康状態の検査 。
当日の体重が応募資格体重を超えた者は、その時点で不合格とします。
- 〔平衡性〕 閉眼片足立ち
- 〔敏捷性〕 サイドステップ、シャトルラン、ジャンプステップテスト
- 〔瞬発力〕 垂直飛び
- 〔筋持久力〕 上体起こし、懸垂
- 〔心肺持久性〕 持久走(1,500m)
- 〔筋力〕 握力、背筋力
- 〔柔軟性〕 上体そらし、立位体前屈
以上12種目の運動能力検査
- 口頭試問、面接などによる騎手候補生としての適性審査
- 入所後における学科の参考のため、一般教養(国語・数学・社会等)についての 学力審査を行います。(試験科目ではありません。)
試験時の注意事項
- 試験場には、指定する時刻(午前 9 時)までに集合する。
- 筆記用具、運動のできる服(上・下) 及び運動靴、並びに宿泊に必要な衣類や洗面用具等を持参する。
- 受験料はかかりませんが、受験者の負担(500 円)で簡易傷害保険に加入必須。(試験当日に徴収します)
地方競馬教養センターへ入所しよう
教養センター受験に合格できれば、いよいよ2年間の騎手候補生としての生活が始まります。全寮制ですので授業料以外にも食材費などの経費もかかりますし、教育内容も気になるところですね。
必要経費
2年の教育期間で掛かる経費は
- 入学金 56000円
- 授業料(19ヶ月分)627000円
- 食材費(19ヶ月分)約760000円
です。
その他の通信費や日常雑貨などの経費に関しては自己負担となっています。
授業料に関しては候補生保護者の家庭状況により教養センター終了後に後払いできる制度がありますし、食材費に関しても家庭状況により徴収を猶予又は免除する制度もあるので経済的に余裕のない家庭でも安心して入所できるシステムになってます。
教育内容
教養センターの養成期間は2年間ですが4学期に区切って教育を進めていきます。
- 第1学期(6ヶ月)基本馬術訓練
- 第2学期(6ヶ月)基本競争訓練
- 第3学期(5ヶ月)総合競争訓練
- 第4学期(7ヶ月)競馬場実習及びセンターでの総合練習
3学期までは教養センター内において全寮制で、4学期はそれぞれの所属予定の競馬場及び教養センターで履修します。
詳しい学科の項目は、講話、競馬関係法規、馬術、調教、馬学、管理、衛生、栄養学、一般教養(国語・数学・社会など)、英会話、剣道などを学びます。
上記以外にも課外授業として、競馬場・牧場見学やレクリエーション(バス旅行・キャンプ・演芸会)なども行います。
4学期まで進むと騎手候補生の間に騎手免許試験に挑むことができます。合格できれば教養センターを対処すると同時にプロの騎手として活躍することになります。
地方競馬騎手免許試験を受験しよう


騎手免許試験は地方競馬教養センターから受験する人と、一般から受験する人に分かれます。教養センターからの受験の場合はセンターでの教育や試験が考慮されて、試験当日は実技試験が免除されていたりと、多少試験内容も異なるので詳しく紹介していきます。
受験資格
- 16歳未満の者は受験することができません
- 地方競馬騎手免許試験は就業予定競馬場の地区別で試験を行いますので自分の就業予定地区が該当する試験なのか確認をしましょう。
基本的に年齢さえ満たせばどんな人でも挑戦することができる試験です。しかし、合格しようと思えばかなりの準備が必要です。
受験申請に必要な書類
下記の書類を期日までに免許課に郵送するか駐在員に提出します。
- 住民票記載事項証明書(5に記載の締切期日前3カ月以内に作成されたものに限る。ただし、申請者 が本邦外居住者である場合には旅券又はその写しに代える。)
- 念書(甲)
- 念書(乙)
- 身体検査書(5に記載の締切期日前3カ月以内に作成されたものに限る。)
- 競馬法遵守の誓約書及び個人情報の第三者提供に関する同意書
- 履歴書
- 写真(端正な服装をした正面上半身脱帽の写真(縦30mm、横24mm)で5に記載の締切期日前3カ月以内に撮影されたもの。裏面に氏名を記載すること。)
欠格事項
- 精神の機能の障害により馬の調教又は騎乗を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者並びに破産者で復権を得ない者
- 禁錮以上の刑に処せられた者
- 競馬法、日本中央競馬会法、自転車競技法、小型自動車競走法又はモーターボート競走法の規定に違反して罰金の刑に処せられた者
- 競馬に関与することを禁止され、又は停止されている者
- 集団的に、又は常習的に暴力的不法行為その他の罪に当たる違法な行為で暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律施行規則第1条各号に掲げるものを行うおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者
- 当協会の運営委員会の委員
- 当協会の役員及び職員並びに地方競馬に関係する都道府県又は指定市町村(地方自治法第284条第1項に規定する一部事務組合であって都道府県と指定市町村とが組織するもの及び指定市町村が組織するものを含む。)の職員
- 地方競馬に関係する馬主
- 次のいずれかに該当することにより免許を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者
- 禁錮以上の刑に処せられた者
- 競馬法、日本中央競馬会法、自転車競技法、小型自動車競走法又はモーターボート競走法の規定に違反して罰金の刑に処せられた者
- 不正の手段により免許を受けたことが判明した者
- 免許証を他人に利用させ、偽造し、又は変造した者
- その他競馬の公正かつ安全な実施の確保に支障を生ずるおそれがあると認めるに足りる相当な理由 がある者
試験内容
試験は新規受験者に向けたものと継続受験者に向けたものがありますが、今回は新規受験者に向けた試験内容を紹介します。
- 【身体】
- 提出された身体検査書による審査
- 【学力】
- 筆記試験(競馬関係法規及び一般常識)
- 【人物】
- 欠格事項に該当する者であるか否かについての調査資料に基づく審査
- 【技術】
- 筆記試験(馬の飼育及び騎乗に必要な技術)
↓一次試験に合格した者のみ↓
- 身体
- 視力及び運動機能の検査並び に体重測定
- 人物
- 面接試験
- 技術
- 実技試験(課題に従った基本騎乗と課題に従った競争騎乗)
教養センター騎手候補生に関しては4学期に行われる試験を技術の実技試験とするので、試験当日の実技試験は免除となります。
まとめ
地方競馬騎手免許試験に合格できれば晴れてプロの騎手としての人生が始まるわけですが、騎手になってからも調教師さんとの繋がりや競馬関係者との繋がりを深めたり、コツコツと勝ちを積み上げて騎手としての信頼感を高めていったりと大変な道は続きます。
それでもレースに勝てた時の関係者との一体感は言い知れぬ喜び、達成感となり、強いやりがいを感じることができる職業だと思います。
今回は



騎手を夢見る皆さんを陰ながら応援したい!
という気持ちを込めて記事を書きました。
最後までありがとうございました。
JRA騎手になりたい方はこちら↓


コメント